ある時には富を、ある時には破滅を。都市の繁栄と人々の運命を握る、気まぐれな女神。ローマ神話のフォルトゥナと同一視される、チャンスの象徴。
テュケーとはどのような神か?
ギリシャ神話の運命と幸運(チャンス)の女神です。ゼウスの娘、あるいはオケアノスの娘とされます。頭に城壁の冠を被り、手には豊穣の角(コルヌコピア)と、運命を操る舵を持っています。彼女は善悪の判断なく、気まぐれに幸不幸を与える存在であり、予測不可能です。ヘレニズム期には各都市の守護神として爆発的に人気が出ました。
神話でのエピソード
盲目の女神
プラトンなどの哲学者は、彼女の恩恵が知性に基づかないことを批判し、盲目の姿で描くこともありました。誰に微笑むかわからないからこそ、人々は彼女を恐れ敬ったのです。
ネメシスとの関係
信仰と後世への影響
フォルトゥナ
ローマ神話のフォルトゥナと同一視され、「運命の車輪」を回す女神としてタロットカード(運命の輪)のモチーフになっています。
現代の言葉
英語の「Fortune(運)」の語源です。ビジネスやギャンブルにおいて、彼女はいまだに最強の神かもしれません。
【考察】その本質と象徴
不条理の受容
努力だけではどうにもならない現実を、古代人は彼女のせいにすることで納得しました。彼女は理不尽な世の中を生きるための知恵の産物です。
都市の守護者
アンティオキアなどのヘレニズム諸都市では、彼女は都市の城壁を冠として被った姿(テュケー像)として自身の都市を守護すると信じられました。これは都市の運命そのものを神格化したものであり、市民たちのアイデンティティの拠り所でした。
まとめ
彼女をつかまえるには、前髪をつかむしかありません。通り過ぎた後には、チャンスは残っていないのです。