自らの体で毒を試し、薬を見つけた医薬の祖。農業と交易を教えた炎帝。その体は毒で黒ずんでも、彼が残した知識は今も多くの命を救い続けています。
神農とはどのような神か?
中国神話の三皇の一人であり、農業と医薬の神です。「炎帝」とも呼ばれます。彼は人々に農耕器具(鋤や鍬)の発明と耕作を教えました。また、百草(あらゆる植物)を自ら舐めて効能を確かめ、薬草と毒草を分類しました。伝説では彼の胃は水晶のように透明で、食べたものがどう作用するかが見えたといいます。一日に70回も中毒になりながら実験を続け、最後は断腸草という猛毒によって亡くなりました。
神話でのエピソード
お茶の発見
彼が木の下で湯を沸かしていた時、偶然落ちてきた葉が入ってお茶となり、それが解毒作用を持つことを発見したというのが、お茶の起源伝説です。
鞭打つ神
「赭鞭(しゃべん)」という赤い鞭で草木を打つと、その性質(毒か薬か、味など)が瞬時に判明したという伝承もあります。
信仰と後世への影響
日本での信仰
日本でも「神農さん」として親しまれ、製薬会社やテキ屋(香具師)の守護神として祀られています。大阪の少彦名神社などが有名です。
漢方
中国最古の薬物書『神農本草経』は彼の名に由来します。
【考察】その本質と象徴
最初の人体実験
彼は神の力で病を治すのではなく、観察と実験、そして自己犠牲によって医学を切り開いた「科学者」の先駆けでした。
炎帝の由来
彼が「炎帝」と呼ばれるのは、火を使って土地を切り開き(焼き畑農業)、火の力(太陽エネルギー)を植物に変える農業の神だからです。火は文明の象徴であり、彼は火をコントロールすることで人類を飢えと病から救い出しました。近代的な医学が発達する遥か昔に、経験と実験によって薬学の基礎を築いた彼の功績は、計り知れません。
まとめ
良薬は口に苦し。彼が飲み込んだ苦しみは、人類への限りない慈愛でした。