人々の心に愛の矢を放つ、インド版キューピッド。しかし彼が射た相手は、破壊神シヴァでした。第三の目で焼き尽くされ、灰となってもなお、世界に愛を漂わせる不滅の神。
カーマとはどのような神か?
インド神話の愛と性愛(カーマ)の神です。美男子であり、オウムに乗って、サトウキビの弓と5種類の花の矢を持っています。神々の要請を受け、瞑想中のシヴァ神にパールヴァティーへの恋心を抱かせるために矢を放ちましたが、激怒したシヴァの第三の目から発せられた炎によって焼き殺され、灰になってしまいました。後に復活しますが、肉体を持たない「アナンガ(身体なき者)」として、人々の心の中に遍在するようになりました。
神話でのエピソード
命がけの悪戯
彼がシヴァを射たのは、シヴァとパールヴァティーの息子(スカンダ)がいなければ悪魔ターラカを倒せないという、世界の危機を救うためでした。彼は愛のために自己犠牲を払った英雄的側面も持ちます。
仏教での姿
仏教に取り入れられると、「第六天魔王波旬(マーラ)」として、修行を妨げる煩悩の化身とされました。
信仰と後世への影響
Fate/Grand Order
『FGO』では、シヴァに焼かれたトラウマを持つ少女(あるいは宇宙そのもの)として登場し、ビーストクラスの強大な敵、そして愛すべきサーヴァントとして描かれます。
カーマ・スートラ
世界最古の性愛論書『カーマ・スートラ』は、彼が司る分野の教典です。
【考察】その本質と象徴
形なき力
肉体を失ったことで、愛は特定の形に縛られず、あらゆる存在の中に溶け込みました。愛は見えなくても、確実にそこに「ある」のです。
宇宙創造の種
『リグ・ヴェーダ』の宇宙開闢歌では、最初に存在したのは「彼(一なるもの)」だけであり、そこに最初に生まれたのが「カーマ(欲求)」であったとされます。つまり、愛や欲望こそが、宇宙を存在させている根本的な駆動力なのです。
まとめ
春風が甘い香りを運ぶ時、それは灰となった彼があなたのそばを通り過ぎた証拠です。