血塗れの舌を出し、生首の首飾りを身につけ、切り落とした腕を腰に巻く。そんな悪魔のような姿で描かれるのが、ヒンドゥー教の女神カーリーです。彼女は本来、慈愛の女神シヴァの妻パールヴァティーの「怒り」の側面が具現化した姿。なぜ彼女はこれほどまでに荒れ狂うことになったのでしょうか?
黒き時間と死の女神
名前の由来
「カーリー」は「黒い女」あるいは「時間(カーラ)」の女性形を意味します。時間は全てを飲み込み、破壊し、死に至らしめるもの。彼女は抗えない死の運命そのものを象徴しています。
ドゥルガーの怒り
戦いの女神ドゥルガーが、悪魔ラクタヴィージャ(血が一滴落ちるたびに分身する最強の魔物)と戦った際、あまりの怒りに彼女の額から飛び出したのがカーリーです。 カーリーはラクタヴィージャの血が地面に落ちる前に全て飲み干し、彼をミイラにして倒しました。
夫を踏みつける衝撃の構図
止まらない破壊衝動
悪魔を倒した後もカーリーの興奮は収まらず、勝利の舞(殺戮のダンス)を踊り続けました。その足踏みで大地が割れ、世界が壊れそうになったため、夫のシヴァ神が彼女の足元に横たわりました。
舌を出した理由
自分の足元に愛する夫がいることに気づいたカーリーは、「あっ、やっちゃった!」と驚いて舌を出して動きを止めました。 あの恐ろしい形相の舌出しポーズは、実は**「てへぺろ」的な反省の瞬間**を描いたものなのです(諸説あり)。
恐怖と母性
カーリー・マー(母なるカーリー)
恐ろしい姿にも関わらず、インドでは「厳しくも愛のある母親」として絶大な人気があります。子供(信者)を守るためならどんな悪も容赦なく滅ぼす強さは、ある意味で究極の母性愛なのかもしれません。
【考察】善悪を超越した力
破壊は浄化
カーリーの殺戮は、不浄なものを一掃する清めの儀式でもあります。疫病や災厄を「飲み込んでくれる」神として、コルカタ(カリカッタ)の地名の由来になるほど、深く人々の生活に根付いています。
まとめ
優しさと狂気は紙一重。カーリーは、私たちの心の奥底に潜む怒りと、それを鎮める愛の物語を語りかけています。