ゾロアスター教の祭壇で絶えることなく燃え続ける神聖な火、それは単なる炎ではなく「アフラ・マズダの息子」とされる神、アタールです。彼は物理的な火であると同時に、真実を見極める神聖な光であり、浄化の象徴です。信者にとって火に向かって祈ることは、神の純粋なエッセンスに向き合うことであり、アタールは人々の祈りを天上の父へと届ける仲介者です。彼はまた、悪竜アジ・ダハーカと戦い、王権の光(フワルナ)を守り抜いた英雄的な戦士の一面も持っています。
永遠の炎
拝火教の核心
「拝火教」とも呼ばれるように、ゾロアスター教の寺院には決して消してはならない聖火(アタシュ)が祀られています。アタールはこの火そのものです。祭司たちは口を覆う布をつけ、自分の息で聖火を汚さないように細心の注意を払って薪をくべます。この火は、嘘や不浄を焼き払い、世界を清浄に保つ力を持っています。
試練の火
古代ペルシャでは、疑いをかけられた者が火の中を歩いたり、溶けた金属を胸に受けたりする「火の試練」が行われました。アタールは真実を知る神であり、無実の者は火傷をせず、罪ある者は焼かれると信じられていました。
王権を守る戦い
アジ・ダハーカとの激闘
かつて悪竜アジ・ダハーカが、王者の光(フワルナ)を奪おうとした時、アタールはそれを追跡しました。アタールが「もし光を奪えば、お前の口の奥まで焼き尽くしてやる」と威嚇すると、さしもの悪竜もその熱気と神聖な力に恐れをなし、光を諦めて退散したといいます。彼は悪に対して最も強力な武器となるのです。
家庭の守り神
アタールは寺院だけでなく、各家庭のかまどの火にも宿るとされます。彼は家族の健康と繁栄を見守る身近な神でもあり、人々は日々の生活の中で火を大切に扱うことで、アタールへの敬意を示しました。
まとめ
アタールは、私たちの内なる情熱と良心の炎です。その火を絶やさない限り、闇(アーリマン)が心を支配することはありません。彼は暗闇の中で輝く、希望と真実の道標なのです。