アングラ・マイニュとはどのような神か?
アングラ・マイニュは、ゾロアスター教における「悪の原理」そのものです。アフラ・マズダが善きものを創造すると、対抗して「悪しきもの(死、冬、病気、嘘、害虫、毒蛇など)」を創造して世界を汚します。独立した神格というよりは、創造神の影、あるいは双子の弟のような存在として語られることもあります。
神話での伝説とエピソード
反創造
アフラ・マズダが美しい大地を作ると、アングラ・マイニュはそこに「酷寒」や「害虫」を作り出したとされます。すべての創造行為に対して、それを損なうカウンターを行う存在です。
地獄の主
地獄の支配者として、悪しき行いをした人間の魂を招き入れ、永遠の責め苦を与えます。
悪の創造物
アフラ・マズダが「喜び」や「安らぎ」を作ると、アングラ・マイニュは即座に「悲しみ」や「苦痛」を作って対抗しました。彼が生み出したとされる具体的な「悪」には、冬の寒さ、夏の酷暑、病気を媒介するハエ、毒を持つ蛇やサソリ、そして人間の心に宿る「疑念」や「貪欲」が含まれます。
現代作品での登場・影響
Fateシリーズ
『Fate/stay night』などで「この世全ての悪(アンリマユ)」として登場。ゾロアスター教の概念をベースにしつつ、人間の悪意の集合体として独自の解釈がなされ、絶大な人気を博しました。
FFシリーズ
「アーリマン」として、一つ目の空飛ぶ魔物として登場し、死の宣告などの嫌な攻撃をしてくる定番モンスターです。
【考察】その強さと本質
悪の必要性
なぜ世界に悪が存在するのか?という問いに対し、「善の創造に対する必然的な反作用」として悪を定義した、宗教哲学的に重要な存在です。
独立した存在か?
初期のゾロアスター教において、アングラ・マイニュはアフラ・マズダと対等の双子のように描かれましたが、後代(ズルワーン教など)では、無限の時間神ズルワーンから生まれた兄弟とされたり、あるいはアフラ・マズダの「悪い思考」が具現化したものだとする哲学的解釈もなされました。彼の存在定義の変遷は、一神教における「悪の問題(神が善なら、なぜ悪があるのか)」への苦闘の歴史でもあります。
現代への警鐘
現代社会においても、アングラ・マイニュ的な「破壊のための破壊」や「他者の幸福への嫉妬」は決して無くなっていません。彼が象徴するネガティブなエネルギーは、形を変えて私たちの周り、あるいは内面に潜んでいます。しかし、ゾロアスター教が教えるように、最終的に勝利するのは「善き思考」です。我々は彼を恐れるのではなく、自らの内なる光で対抗しなければなりません。
まとめ
彼はただ破壊するためだけに存在する。私たちが悪意を抱くとき、そこにはアングラ・マイニュが潜んでいるのかもしれません。彼のこの二義的な性質は、現代の神学研究においても尽きない議論の的となっています。