トロオドン(Troodon)は、白亜紀後期の北米に生息していた小型の獣脚類です。「傷つける歯」という意味の名を持ち、一見するとラプトルの仲間に見えますが、彼らは恐竜界で最も優れた「頭脳」を持っていたことで知られています。もし恐竜が絶滅していなければ、彼らが文明を築いていたかもしれないと言われるほど、その知能の高さは際立っていました。
恐竜人間への進化?
トロオドンの最大の特徴は、体重に対する脳の重さの比率(脳化指数)が、あらゆる恐竜の中で最も大きいことです。これは現在のダチョウや、一部の哺乳類に匹敵するレベルです。この事実に注目した古生物学者デイル・ラッセルは、1982年に「もし恐竜が絶滅せずに進化し続けていたら、トロオドンは直立二足歩行をして道具を使う知的生命体(ディノサウロイド)になっていただろう」という大胆な仮説を発表しました。この宇宙人のような見た目の模型は賛否両論を呼びましたが、トロオドンの潜在能力の高さを示すエピソードとして有名です。
闇を見通す目
彼らの眼窩(目の穴)は非常に大きく、顔の正面を向いていました。これは彼らがフクロウのように優れた夜間視力(ナイトビジョン)と、距離感を正確に掴む立体視能力を持っていたことを示しています。恐竜の多くは昼行性でしたが、トロオドンは夜闇に紛れて狩りをする「夜のハンター」でした。眠っている小型哺乳類やトカゲにとって、彼らの輝く目は死の宣告そのものでした。
鳥に近い姿
近年の研究では、全身が羽毛で覆われていたことがほぼ確実視されています。抱卵(卵を温める)の姿勢をとった近縁種の化石も見つかっており、鳥類と同じように体温を保ち、子育てをしていた可能性が高いです。手足にはかぎ爪があり、特に足の第2指にはラプトル同様のシックルクロー(鎌状の爪)を持っていましたが、これは木登りや獲物の捕獲に使われていました。
まとめ
トロオドンは、力ではなく知恵で生き抜こうとした恐竜です。その賢い瞳の奥にあった光は、もはや動物というよりは、私たちに近い何かが芽生え始めていた証拠なのかもしれません。