古代ペルシアの叙事詩『シャー・ナーメ』に登場する、両肩から脳みそを喰らう蛇を生やした魔王、それがザッハークです。彼は元は人間でしたが、悪魔アーリマンの姦計により堕落し、世界を千年にわたり恐怖で支配しました。
悪魔の口づけと蛇
料理人に化けた悪魔
ザッハークは元々アラブの王子でしたが、父を殺して王位を奪いました。そこに料理人に化けたアーリマンが現れ、絶品の料理で彼を魅了します。褒美として「両肩にキスさせてほしい」と頼まれたザッハークがそれを許すと、そこから二匹の恐ろしい黒蛇が生えてきました。
若者の脳みそを要求
この蛇は切り落としてもすぐに再生し、人間の脳みそを与えなければザッハーク自身の脳を喰らうと脅しました。そのため、毎日二人の若者が殺され、その脳が蛇の餌食となりました。
英雄フェリドゥーンとの戦い
鍛冶屋カーヴェの反乱
息子を殺された鍛冶屋カーヴェが皮のエプロンを旗印に反乱を起こし、英雄フェリドゥーンを指導者に推戴しました。
ダマーヴァンド山への封印
フェリドゥーンは牛頭のしごき棒でザッハークを打ち倒しましたが、天使より「彼を殺すと毒虫が世界に溢れる」と告げられたため、殺さずにダマーヴァンド山の洞窟に鎖で繋ぎ、幽閉しました。彼は世界の終わりまでそこで生き続けるとされています。
アジ・ダハーカとの関係
三頭龍の化身
ザッハークの名の由来は、古代の怪物**「アジ・ダハーカ(三頭の悪竜)」**にあります。時代が下るにつれ、三つの頭を持つドラゴンから、肩に二匹の蛇(=本体と合わせて三つの頭)を持つ人間へと伝承が変化しました。
まとめ
ザッハークは、権力への執着がいかに人を怪物へと変えるかを示す象徴的な存在です。その不気味なビジュアルは、現代のダークファンタジー作品にも多大な影響を与えています。『アルスラーン戦記』などの作品でも、封印された恐怖の象徴として描かれ、物語に緊張感を与える重要な役割を担い続けています。彼の伝説は、暴政への抵抗と自由への希求の物語として、今も語り継がれています。