映画『エクソシスト』で少女に憑依した悪魔として世界的に有名になったパズズ。しかし、彼の故郷である古代メソポタミアでは、単なる邪悪な存在ではありませんでした。獅子の顔と鷲の翼を持つ彼は、恐ろしい熱風を呼ぶ魔神でありながら、妊婦や子供を守る「頼れる魔除け」としても不可欠な存在だったのです。
異形の風の魔神
キメラ的な外見
パズズの姿は非常に特徴的です。獅子や犬のような頭、鷲の脚と爪、背中には4枚の翼、そしてサソリの尾を持ち、直立した姿で描かれます。これは、空(鳥)、陸(獅子)、地底(サソリ)のすべての領域に影響力を持つことを示唆しています。
災厄の運び手
彼は南西から吹く熱風の化身とされ、農作物を干上がらせたり、イナゴの大群を運んできたりする災厄神として恐れられました。彼が息を吐けば、熱病(マラリアなど)が蔓延すると信じられていました。
毒を以て毒を制す守護者
宿敵ラマシュトゥ
パズズには天敵がいました。それが、妊婦を襲い赤ん坊を連れ去る最悪の女悪魔ラマシュトゥです。パズズ自身も悪党ですが、彼はラマシュトゥを追い払う力を持っていました。 そのため、古代の人々は「ラマシュトゥよりはパズズの方がマシ」「パズズ様の怖さでラマシュトゥを追い払ってもらおう」と考え、パズズの像や護符を魔除けとして寝室に飾りました。悪をもって悪を制す、究極の必要悪だったのです。
映画によるイメージの変容
エクソシスト
1973年の映画『エクソシスト』の冒頭でイラクの遺跡から発掘されたのがパズズの像です。映画内ではキリスト教的な「サタン」と同一視され、絶対悪として描かれましたが、これは本来の伝承とは異なります。
ゲームでの扱い
RPGでは、風属性の攻撃を得意とする敵や召喚獣として登場することが多いです。『FF』シリーズや『女神転生』では常連であり、その独特なポーズ(右手を上げ、左手を下げる)も忠実に再現されています。
【考察】自然の二面性
風の猛威と浄化
風は、病気を運ぶ媒体であると同時に、淀んだ空気を吹き飛ばす浄化の力も持っています。パズズが破壊神と守護神の両面を持つのは、砂漠地帯に住む人々にとっての「風」という自然現象の複雑な性質を擬人化しているからでしょう。
まとめ
パズズは、人間を害する魔王でありながら、人間を守る盾でもありました。清廉潔白な天使にはできない「汚れ仕事」をやってのける彼は、ある意味で最も頼りになるボディーガードだったのかもしれません。