「猫は長生きすると化ける」...古来より日本では、身近なペットである猫に対して、どこか神秘的で恐ろしいイメージを抱いてきました。可愛らしい姿の裏に潜む、底知れぬ知性と執念。化け猫は、そんな猫という動物の二面性が生み出した、最も有名な日本妖怪のひとつです。
猫又との違いと能力
尾の数は一本が基本
よく混同される「猫又」は尻尾が二股に分かれていますが、化け猫は必ずしもそうではありません。猫又は山に住む野生化した老猫が変じたものとされる一方、化け猫は家猫が12、3年以上生きたり、特定の重量(一貫=3.75kg)を超えたりした時に妖力を得ると言われます。
恐るべき妖力
化け猫の能力は多岐にわたります。最も恐れられるのは、人間への変身です。主人の古着を着て手ぬぐいを被って踊ったり、あるいは主人を食い殺してその人物になりすましたりします。また、死体を操る(死人の上をまたぐと生き返らせる)能力もあるとされ、葬儀の場では猫を遠ざける風習が生まれました。行灯の油を舐める影が巨大な化け物に見えるという話は有名ですが、これはかつて行灯の油に魚油が使われており、猫が立ち上がって舐める習性があったことに由来するリアリティのある怪談です。
鍋島の化け猫騒動
怨念の復讐劇
日本三大怪談の一つ、佐賀藩の「鍋島騒動」は化け猫伝説の集大成です。無実の罪で殺された主人の龍造寺又七郎の無念を晴らすため、愛猫が化け猫となって城内に侵入し、殿様の側室に化けて夜な夜な人々を苦しめます。ついに忠臣・小森半左衛門によって退治されますが、この物語は歌舞伎や映画(『怪猫佐賀騒動』など)の題材として大ヒットし、「化け猫=復讐する女性の怨念」というイメージを決定づけました。
まとめ
化け猫は、人間の生活に深く入り込んだ動物だからこそ生まれた妖怪です。彼らは人間の「罪」や「後ろめたさ」、そして日常の中に潜む狂気を映し出す鏡のような存在なのかもしれません。