日本の「子泣き爺」や「おばりよん」に似た妖怪は、遠く離れたドイツにもいます。「アウフホッカー(Aufhocker)」は、ドイツ語で「背中に飛び乗る者」を意味する、恐怖のおんぶお化けです。しかし日本のそれより遥かに凶暴で、命に関わる危険な存在です。
親切心を仇で返す
罠にかかった旅人
アウフホッカーは、夜道で泣いている老婆や子供、あるいは道端に座り込んでいる怪我人のふりをして現れます。通りかかった親切な旅人が「助けてあげよう」と背負うと、その瞬間に本性を現します。この「弱者を装う」という点が、他の怪物と比べても極めて悪質です。
殺意ある重量
背負った途端に彼らは信じられないほど重くなり、巨大化します。そして鋭い爪を旅人の喉に突き立てたり、首を絞めたりします。単に重いだけでなく、正体は吸血鬼や狼男の霊であるとされ、犠牲者の血を吸うこともあります。目的は単なる悪戯ではなく、旅人の命そのものなのです。
教会への結びつき
鐘の音が救い
この妖怪から逃れる方法は、教会の鐘の音を聞くことです。朝の鐘や祈りの鐘が鳴ると、アウフホッカーは力を失い、背中から転げ落ちて消滅します。教会の墓地に埋葬されなかった罪人の魂が、救いを求めて人間の背中にしがみつくのだとも言われています。
「重さ」の怪異
精神的な重圧
「肩に何かが乗って重くなる」という感覚は、世界共通の恐怖体験です。罪悪感や疲労、ストレスといった「心の重荷」が、具体的な質感を伴った怪物として具現化されたものと考えられます。
【比較】子泣き爺との違い
攻撃性の有無
日本の子泣き爺は石になって押し潰すだけですが、アウフホッカーは積極的に殺害しようとします。これは西洋における「悪霊」の攻撃的な性質を反映しています。
まとめ
アウフホッカーは、善意を利用する卑劣な妖怪です。知らない人を不用意に背負ってはいけないという、夜道の教訓が含まれているのでしょう。