「船乗りシンドバッド」の名で知られる、世界で最も有名な冒険家の一人。バグダッドに住む彼は、安楽な生活に飽き足らず、交易のために七度も商船で海へ繰り出しました。そのたびに船が難破し、絶体絶命のピンチに陥りますが、持ち前の知恵と勇気、そして強運で生き延び、巨万の富を持って帰還します。彼の物語は、中世イスラム世界の広範な交易ネットワークと、未知の世界への憧れを反映しています。
驚異の航海
最初の航海:動く島
上陸して焚き火をしていた島が、実は巨大なクジラ(または魚)の背中だったという有名なエピソード。海に投げ出された彼は、木の桶につかまって漂流し、ある王国の王に気に入られて富を得ます。
第二の航海:怪鳥ロック
無人島に取り残された彼は、空を覆う巨大な白いドームを発見します。それは伝説の怪鳥ロックの卵でした。彼は自分の体をロックの足に縛り付け、谷底にある「ダイヤモンドの谷」へと移動。そこから宝石を持ち帰ることに成功しました。
第三の航海:食人巨人
一つ目の巨人が住む島に漂着。仲間たちが次々と串焼きにされる中、シンドバッドは焼けた鉄串で巨人の目を潰して脱出しました。このエピソードは『オデュッセイア』のサイクロプス退治と酷似しており、神話の伝播を感じさせます。
語り部として
荷担ぎシンドバッド
この物語は、富豪のシンドバッドが、貧しい「荷担ぎシンドバッド」に自分の冒険を聞かせるという形式で語られます。「私はこれほどの苦労をして今の富を得たのだ」と語ることで、富の正当性を説きつつ、最後には貧しいシンドバッドにも富を分け与えました。
交易の歴史
シンドバッドの航海譚は、かつてバグダッドからインド、東南アジア、中国へと至る「海のシルクロード」で活躍したイスラム商人たちの実際の経験がベースになっています。動く島(クジラ)やロック鳥(マダガスカルのエピオルニスがモデル?)などの話は、遠い異国の驚異を伝える船乗りたちの噂話が集積されたものであり、当時の世界観を知る貴重な史料でもあります。
まとめ
どんな苦境からも生還する不屈の精神と、尽きせぬ好奇心。シンドバッドは、リスクを恐れずに世界へ飛び出す全ての冒険者たちの象徴です。