19世紀後半、アメリカの鉄道建設ラッシュを支えたアフリカ系アメリカ人の労働者たち(スティール・ドライビング・マン)の間で歌い継がれた伝説の英雄。彼は身長2メートルを超す巨漢で、巨大なハンマーを振るって岩盤に穴を穿つ達人でした。ある日、最新の発明品である「蒸気ドリル」が現場に持ち込まれ、「機械は人間より速い」と豪語するセールスマンに対し、ジョン・ヘンリーは男の誇りを賭けて競争を挑みました。
機械 vs 人間
命がけの勝負
ビッグ・ベンド・トンネルで行われた競争は、凄まじいものでした。ジョン・ヘンリーは両手にハンマーを持ち、筋肉を躍動させて岩を砕き続けました。機械の轟音とハンマーの打音が響き渡る中、規定の時間が終了。結果は、ジョン・ヘンリーが14フィート、蒸気ドリルが9フィート。見事に人間が勝利しました。
勝利の代償
しかし、ゴールした瞬間に彼は倒れ込みました。心臓が破裂し、ハンマーを握りしめたまま息を引き取ったのです。彼は機械化によって失われゆく「人間の尊厳」と「労働者の誇り」を守るために命を燃やし尽くしたのでした。
労働階級の英雄
フォークソング
彼の物語はバラード(労働歌)として全米に広まりました。「ハンマーを持って死ぬ(Die with a hammer in my hand)」というフレーズは、過酷な労働環境に置かれた人々の魂の叫びとして共感を呼び、ジョニー・キャッシュやハリー・ベラフォンテなど多くの歌手によってカバーされています。
アフリカン・アメリカンの誇り
ジョン・ヘンリーの伝説は、奴隷制廃止後のアフリカ系アメリカ人社会において、肉体労働の過酷さと、それに耐え抜く強靭な精神力の象徴として語り継がれました。彼の物語は人種を超えて労働者の尊厳を訴えるものとなり、公民権運動の時代にもフォークソングとして歌われました。彼は単なる腕力自慢ではなく、人間の魂の不屈さを体現する英雄なのです。
まとめ
テクノロジーの進化に対して、肉体と魂で対抗したジョン・ヘンリー。その姿は、効率化の中で忘れられがちな「人間の強さ」を今に問いかけています。